
ビジネスシーンでの英語コミュニケーション能力を測るTOEIC® L&R TESTは、これまで社会人や大学生が受験するイメージが強いものでした。しかし、近年では高校生の受験者も増えています。
「ビジネス英語は難しそう」と敬遠されるかもしれませんが、TOEICでは高度な専門知識がないと解けない内容は出題されません。出題されるトピックもある程度限られているため、きちんと対策をすればスコアアップは十分に可能です。
この記事では、高校生がTOEICを受験するメリット、そしてその準備や学習方法について解説します。
1. 高校生がTOEIC® L&R TESTを受験するメリットは?
本格的なビジネス経験もなくそれが必要ともされていないことの多い高校生にとって、ビジネス英語のテストであるTOEICを受ける意味はあるのでしょうか?実は、高校生がTOEICを受験することには複数のメリットがあります。
まず、大学受験では、TOEICスコアを英語試験の代わりとして提出できる大学があるほか、出願資格となったり、合否判定の際に加点の対象となったりするケースもあります。また、総合型選抜や推薦入試でのアピール材料として活用できる点も魅力です。さらに、アジアをはじめとする海外の大学への留学時に、英語力の証明としてTOEICスコアが利用できることもあります。このように、TOEICは高校生にとって非常に有用な試験のひとつといえるでしょう。
また、すぐにスコアを使う予定がない場合でも、将来、就職活動でTOEICスコアが必要になる可能性があります。その際、高校生のうちに一度TOEICを受験しておくことで、問題形式やテストの流れを把握できるため、初めて受ける場合に比べて効率よくスコアアップを目指せるという大きな利点があります。
2. 初めてTOEIC® L&R TESTを受ける前にやること
2.1 今の英語力を把握する
まず、自分の現在の英語力を把握することで、具体的な対策が立てやすくなります。おすすめなのは、実際に一度TOEICを受験してみるか、公式問題集を使って本番に近い環境で模試を1セット解いてみることです。
その際、「どのパートが解きやすかったか」「どこが難しかったか」といった感触を意識してみましょう。たとえば、「長めのリスニングが聞き取れなかった」「リーディングの時間が足りなかった」など、具体的な課題が見えてくるはずです。
2.2 目標スコアを決める
効果的な学習のために、まずは自分の目標スコアを設定しましょう。大学受験などでTOEICスコアの提出が必要な場合は、その提出条件が具体的な目安になります。
すぐにスコアを使う予定がないなら、まずは英語の基礎力を測る目安として470点を目指すとよいでしょう。その上で、TOEIC受験者の平均点に近い600点を次の目標とすることで、学習の達成感も得られます。さらに余裕があれば、大学受験や留学・就職などで高く評価される800点レベルを視野に入れるのもよいでしょう。このように段階的に目標を設定することで、無理なく英語力を伸ばしていくことができます。
2.3 勉強スケジュールを決める
目標スコアを設定したら、スコアを提出する必要がある場合にはそれを踏まえて学習スケジュールを立てましょう。試験日とスコア結果の出るタイミングを確認し、提出期限に間に合うよう逆算して準備期間を見積もることが大切です。
学校の勉強と並行して取り組むのは大変かもしれませんが、無理のないペースで進めることが継続のコツです。たとえば、平日は単語学習やリスニングなど短時間で取り組める内容にあて、週末は長文問題などのためにまとまった学習時間を確保するといったように、スキマ時間と集中時間を組み合わせて学習を進めていきましょう。
3. 高校生のためのTOEIC® L&R TEST勉強法
3.1 TOEIC® L&R TESTの出題形式を把握する
TOEICの出題形式は独特で、学校の定期テストなどとは大きく異なります。特に、2時間で200問を解く形式のため、時間管理を意識せずに解き進めると、解けるはずの問題にたどり着く前に時間切れになってしまうこともあります。
学習には、本番に近い形式の問題が収録された公式問題集やTOEIC専門教材を使うのがおすすめです。また、「長文リスニング問題では設問を先に読んでおく」などのように、解き方にコツがある問題も多いため、解き方の解説付きのテキストや動画教材などを併用するのも効果的です。
3.2 英単語と文法を覚える
TOEICに出てくる単語はビジネスシーンで使われるものが中心となるため、高校の英語の授業で習う語彙に加えて覚える必要があります。TOEICに特化した単語本やアプリを活用すると効率的です。
また、TOEICで問われる文法の多くは中学英語の範囲に収まります。中学英文法をしっかり復習しておくことが大切です。特にPart 5・Part 6では文法知識が問われる問題が多いため、TOEICに特化した文法問題集を使って出題パターンに慣れておきましょう。
3.3 リスニング勉強方法
英語のリスニングに自信がない人は、まずはPart 1やPart 2のような短めの英文から練習を始めましょう。ディクテーション(聞いて書き取る)、リピーティング(音声の後に繰り返す)、シャドーイング(音声のすぐ後を追って言う)などの方法で、聞くだけでなくアウトプットする練習を繰り返すことが大切です。英語特有の音のつながりやリズムに慣れてくると、次第に聞き取れるようになります。
Part 3・Part 4の長文リスニングでは、聞き取る力に加えて「音声が流れる前に設問を先に読み、ヒントを待ち受けながら聞く」という、解答するためのスキルが必要になります。そのため、本文だけでなく、設問や選択肢の意味もしっかり理解する学習が重要です。
3.4 リーディング勉強方法
TOEICの長文読解(Part 7)でも、ビジネスに関連する文書が多く出題されます。仕事の経験がないと難しく見えるかもしれませんが、内容はどの業種にも共通する一般的な場面が中心であり、パターンもある程度限られています。たとえば、「顧客による製品レビュー」や「面接依頼メール」など、どんな状況・背景で交わされる文書なのかを想像しながら読むことが大切です。仕事に関する語彙には高校生になじみのないものも多いため、まずは問題集の語注や和訳で意味を確認してから問題文を丁寧に読み、設問に対する正解の根拠がどこにあるのかを明確に特定するようにしましょう。
TOEICのリーディングセクションは問題数が多く、限られた時間内に全問に目を通すには、ある程度の読解スピードが求められます。本文を速く、かつ正確に読み進める力をつけるためには、「速く読む」ことを日ごろから意識しておきましょう。TOEICの問題文に限らず、読みやすい英語の本やウェブサイトなどに日常的に触れることも、英文に慣れる上で効果的です。
3.5 復習を定期的に行う
学習した内容の復習は、一度きりではなく、時間をおいて繰り返すことで定着率がぐっと上がります。週末などのまとまった時間には、問題をまとめて一気に解きなおす学習も取り入れましょう。
リスニングでは、意味理解・発音確認・音読などを通して復習した問題を、本番と同じ流れでパートごとに、またはリスニングセクションを通して解いてみる練習がおすすめです。本番では音声を止めることはできないため、「流れてくる音声のスピードの中で答える練習」が非常に重要です。
リーディングでは、時間配分の感覚を身につけることが大きな武器になります。以下は本番を想定したおおよその時間配分です。模試などを活用して、時計を見ながらこの目安に近いペースで解けるように練習しておくことで、本番でも時間を有効に使い、得点力を高めることができます。
Part 5(短文穴埋め)30問:10~14分
Part 6(長文穴埋め)16問:8分
Part 7(読解問題)54問:53~57分
解けない問題はマークだけするなど、時間をコントロールする感覚も練習の中で身につけていきましょう。
4. まとめ
高校生にとってTOEICは、普段のテストとは少し違う形式のため、最初は戸惑うこともあるかもしれません。しかし、コツコツと問題を解いて練習を重ねることで、出題されるビジネス場面に慣れ、スコアを伸ばすことができます。
TOEICは大学進学や将来の就職などで選択肢が広がる可能性もあるテストです。手軽に始められる教材やアプリも充実していますので、ぜひ一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。



