
少し前は「英語が苦手だから理系に進みました」という方が一般に多かった記憶ですが、昨今では「理系の人間にこそ英語が必要だ」という声をよく耳にします。そもそも理系・文系と分けるのも日本的な考えで、「理系だから英語ができなくてもOK」という前提そのものがおかしかったのですが、社会のIT化と世界のさまざまな問題解決を科学に求めるという方向性から、かつてなく「エンジニア」と「英語」が切り離せないものとなりつつあるようです。
1. なぜITエンジニアが英語を学ぶ必要があるのか?
1.1 社会の変化
数十年前の日本では「英語は『文系の人』が学ぶもの」というステレオタイプな考えがあったように思いますが、インターネットやAIがインフラ化している現代社会において、英語はむしろ「理系の人」にとってより習得の必要性が喫緊の言語となっているようです。ネット上の情報の半分近くが英語で書かれているという現状に加えて、エンジニアや理系研究者にとって英語は仕事のコアな部分(リサーチ、論文、データ分析、コーディング、ディスカッション、コミュニケーション等)を占める重要言語です。
1.2 外国人エンジニアとのコミュニケーション
現在、日本にあるIT系大手企業の多くが外国人エンジニアを大量に雇っており、エンジニアチームの共通言語が英語という状況が珍しくなくなりました。もしあなたが日本人エンジニアとしてそのチームの一員となるとしたら、異文化の中で仲間との意思疎通を図りながら、仕事を成功させるためにも、英語は不可欠のツールとなります。
1.3 最新技術情報の取得
研究論文やデータなど、最新で重要なものは英語でリリースされることがほとんどです。英語の情報からのインプットをある程度のスピードで処理できる能力がないと、専門分野での情報収集の力も周りに比べて劣ることになってしまいます。エンジニアを目指す人は、特に「読む」「聞く」といったパッシブ(受動的)な能力の精度を上げておくと、社会人になってから有利でしょう。
1.4 コミュニケーションの円滑化
企業内外のエンジニア間の一般的なコミュニケーションやディスカッションはもちろん、少し上の立場になった際には会議の進行(ファシリテーション)なども英語で行えるようになる必要があります。また、上司として外国人エンジニアの部下に対して業務評価を共有するなど、いずれは異文化コミュニケーションも踏まえた発信力も求められることになるでしょう。
2. 英語初級者(CEFR A1~A2)のITエンジニア向け勉強法
2.1 基礎的な文法と語彙の習得
このレベルでは、IT系ボキャブラリー(ほぼカタカナ英語)よりも一般的な単語や文法の土台を作ることが大事です。多くのエンジニアにとって英語は死活問題に近いので、「急がば回れ」の姿勢で中学英語から基礎固めをしましょう。書店に行けば多くの「やり直し中学英語」の本が出ています。まず一冊やり切ってみましょう。
2.2 日常会話のフレーズを覚えて使う
周りの外国人エンジニアと良好な人間関係を作るためにも、簡単なあいさつや軽い雑談など、ちょっとした気楽な会話ができるようになりたいものです。英語の会話フレーズ集なども活用して、毎日使える表現をマスターしていきましょう。オンライン英会話などもよい練習の場になりそうですね。
2.3 資格試験のチャレンジを始める
英語を自分の味方にしてエンジニアとしての今後のキャリアパスを考えるのであれば、TOEIC® L&R TESTなどの資格試験のスコアを目指すことは、学習を計画的に進める上でも効果的です。是非なにか具体的な数値を目標に置いてみましょう。TOEICならば500点あたりがCEFR A1~A2相当になります。
3. 英語中級者(CEFR B1~B2)のITエンジニア向け勉強法
3.1 英語資料、論文などの処理スピードを上げる
TOEICで730点以上(CEFR B1~レベル)を越えてきたら実践も兼ねて専門分野の英語資料や論文のアブストラクト(要旨)などの読み込みにも積極的にチャレンジしていきましょう。処理スピードを上げるために英語を大量に読み、聞くことをお薦めします。「習うより慣れろ」のアプローチは、自分のペースで学習を進めたい人にとっても取り組みやすいスタイルになるでしょう。
3.2 外国人エンジニアとディスカッションする
英語の実践の場では正確さをあまり求めず、積極的に自分の意見を英語で伝えていきましょう。同僚とのディスカッションの機会があればどんどん参加して経験を積むと良いですね。仕事の場であれば専門用語もふんだんに使う内容になると思いますが、内容が込み入っても丁寧に説明することを心がければ、必ずあなたの意図は伝わります。このレベルはぐっと成長できるタイミングなので、個人レッスンや、エンジニア英語に特化したクラスなどでのレッスンを受けて、集中的に学習するのもお薦めです。
3.3 社内プレゼンやファシリテーションスキルを向上させる
エンジニアリングという、コンピューターに向かう時間が長い世界でも、プレゼンやファシリテーションの能力が高いほど、より多くの社内的、また対外的な機会に恵まれると思います。内向的で人と目を合せるのも苦手だという場合は無理にやらなくても良いと思いますが、興味がある方は是非チャレンジしてみましょう。プレゼンやファシリテーションは意外に定型表現が多いので、それをしっかり覚えて使った上でご自分の専門分野をカバーすればさほど難しくありません。
4. 英語上級者(CEFR C1以上)のITエンジニア向け勉強法
4.1 上級者としての試練に耐える
英語がある程度上手くなってくると、多くの会話相手(特にネイティブスピーカー)は「あ、この人には容赦しなくていいんだな」と思うようなので、発話スピードや表現がネイティブ間での会話と変わらないものになっていきます。それに対して、受け手である自分が自然に対応できるのかというと、多くの場合できません。ここで「あ、やっぱり自分は英語ができないんだ」という衝撃に見舞われますが、諦めずに更なる文法のブラッシュアップ、語彙の構築、聞き取り・発音の改善に励むことができると、一段上の、ある意味本当の「上級者」になることができます。是非頑張ってください。
4.2 国際的な会議やセミナーへの参加
このレベルになると、社内会議や社内プレゼンの範疇から出て、国際的な舞台でチャレンジできる準備が整い始めます。会社やチームを代表して発言する機会を積極的に取りに行きましょう。また、こうした場で得られる海外のエンジニアや研究者とのネットワーキングは、様々なコミュニケーションスタイルに触れられる貴重な機会ですし、あなたの「英語を武器にするエンジニア」としての価値をより高めてくれるものになるでしょう。「日本の外で働く」という選択肢もごく自然に生まれてくると思います。
4.3 周りのエンジニアをサポート
CEFR C1以上のレベルの英語力を持つあなたなら、社内の英語に悩んでいる他のエンジニアの皆さんをサポートすることもできるでしょう。ご自分の学習体験をシェアしたり、社内での英語イベントの開催に協力したり、日本人エンジニアと外国人のエンジニアがより良い環境でチームとして力を発揮するために、あなたの経験や知識が求められています。周りをサポートすることであなたに戻ってくるものも多いでしょう。
5. まとめ
エンジニアの世界に限らず、今後の日本経済の発展のために言語の壁は低いに越したことはありません。グローバル化がとどまることを知らない現代社会においては、英語とIT産業はこれまで以上に密接になっていくでしょう。その国内最前線であるエンジニアの皆さんに、本記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。


